【創作】うらしまたろう〜乙姫視点〜

孫:「うらしまたろう」ってかわいそう
祖父:かわいそう?
孫:だってカメさんをたすけてあげたのに、さいご、けむりでおじいさんにされてかわいそうだよ
祖父:確かに浦島太郎視点では可哀想だけど、乙姫視点では違うかもよ
孫:どういうこと?
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乙姫:アイツ、太郎、全ッ然帰らないんだけど?
カメ:乙姫さまが大事にされているカメを助けて頂いたのだからそういう言い方はよくありません。
乙姫:いや「大事にされているカメ」って自分で言うな?まあ、大事にはしているけどなんか腹立つから。そんなことよりもアイツ、太郎、一ヶ月以上いるよ。
カメ:それでもです。
乙姫:いやいやいやいやおかしいってまじで。カメを助けたからって他人ん家に一ヶ月以上滞在するもんかね。あの手この手で察してもらおうとしても全然察しないし。竜宮城って広いからさお手洗いを毎回聞かれるたびにお出口ですか?と聞き返してもお手洗いって言うし、そろそろ自宅のご飯が恋しくなりませんか?と聞いてもこっちのご飯の方が美味しいって言うし。最初こそ丁重にもてなして夜通しどんちゃん騒ぎしてお礼してさ、まあ久々の客でこっちもテンション上がったっていうのもあるけど、あと年度末で予算残したくなかったっていうのもあるけど。でも最後の方は三食「ぶぶ漬け」出しても全然帰らねぇじゃん。つか三食ぶぶ漬けより下のメシってなんだよ。どんな食生活してたんだよアイツ。もう本人の意思では帰らなそうだから陸の人間に察してもらおうとして、家族が心配すると言っても一人っ子で両親は他界して独り身って言うし、仕事は?と聞いても個人事業主の漁師って言うし、友達は?と聞いても所帯持ちでなかなか遊んでもらえないって言うし、もう詰みじゃん。こうなったら直接言う!?帰ってくださいって!?
カメ:それはなりません!
乙姫:失礼なのは分かってるけどさ、一ヶ月以上滞在してる方も十分失礼だろ
カメ:失礼だけの問題ではありません。この深海では古くから「察して文化」が根強くある地です。そこで直接的な要望を感情のままに口にするなどあってはならないのです。
乙姫:でもそれは日本海の深海のルールであって海外の深海には適応しないし、ましてや陸の人には関係ないんじゃない?
カメ:なりません。いいですか、サメさんが、帰国子女のサメさんが最近いないのを知っていましたか?
乙姫:いや、そういえばいないね。また海外出張?
カメ:いいえ、退職されたんです。
乙姫:え!?退職!!?この超絶安泰な「竜宮城」を辞めたの!?どうして!!!??
カメ:「ストレートジョーク」を口にしたのです。
乙姫:え?海外ドラマでよく見る「〜だからこういってやったんだぜ」って言うやつ?
カメ:そうです
乙姫:たったそれだけで…?
カメ:乙姫さま世代は、それだけのことと思われるかもしれませんが、古い魚からするとやはり不快に感じるものです
乙姫:でもジョークだし相手に直接的になにかを言ったんじゃないなら無効じゃない?
カメ:まあ今回は言った相手も悪かったのでしょう。なにせあのイルカ婦人ですから
乙姫:あー、気に入らないとなんでも大げさにして周りを巻き込んで自分の思い通りにするイルカ婦人かぁ。
カメ:真意はわかりませんが、言われて慣れていないストレートジョークに充てられてイルカ婦人が寝込んだと噂になり、居づらくなったサメさんが転居されてようです
乙姫:うわーイルカ婦人ならそれくらい大騒ぎしそうだわ、容易に想像がつく。つか陰湿。普段からサメさんのことをライバル視してたからストレートジョークを言われてシャーク(癪)に障ったんだな、サメだけに。でもそれが太郎に直接帰ってくれと言うのとなんの関係があるの?
カメ:乙姫さまが太郎さまに直接物申して、太郎さまには無効でも周りで聞いている深海魚たちがぎょっとするのです、魚だけに。直接言葉に耐性のない者たちが乙姫さまに不信感を抱くやもしれませぬ。そうなれば竜宮城は統制が取れなくなりおしまいです。
乙姫:な、なるほど。やっぱり直接言うのは辞めよう。リスクが高すぎる。でもじゃあ、どうしたらいいん?今日もまたタコ爺と深海の歴史について熱心に案内を受けてるよ。楽しいのか、アレ
カメ:乙姫さまはもっと深海の歴史に興味を持ってくだされ。太郎さまは元来好奇心旺盛なのかもしれませんね
乙姫:太郎が来て良かったことはタコ爺の深海歴史講義から解放されたことだな。太郎のリアクションがめっちゃ良いからタコ爺もホクホク顔で説明しているよ。つかさ、陸と深海って時間の流れが違うけどこんなに長く深海にいて大丈夫なん?
カメ:え
乙姫:え?
カメ:(青ざめる)
乙姫:え、ちょっと、待って。え!説明してないの!?
カメ:(こくり)
乙姫:えええええええ!!!!!!それめっちゃやばいじゃん!!!!
カメ:このカメ一生の不覚!客人が久方すぎてよりによって一番大事な時差の説明を忘れるなんてぇ!(泣)
乙姫:オッケー、一回落ち着こう。いつもの時差は3日くらいなのね。今回はざっと計算すると、ええっと、うわー50年くらい経っちゃってるわ。うわー、まじでやばい。太郎の身内もとからいないけどそれだけ時間が経過してたら知り合い諸共亡くなっている可能性が高い。まじで独りぼっちじゃん。やべー。
カメ:さらに問題なのは太郎さまが「煙」を浴びたら老人になってしまうことです。
乙姫:あー、そっか。「玉手箱」のこと忘れてた。やべー。まじでやべー。
カメ:通常でしたら陸と深海の時差調整のために特殊加工した玉手箱に入れた煙を浴びてもらいます。その際に煙に包まれ3日経過しても夢見心地だったと自己完結して深海の存在がうやむやに終わっていましたが、今回はとてもうやむやにはできません。
乙姫:50年経ってたら夢じゃ済まないよね。自分もなぜかお爺さんになるし。
カメ:…
乙姫:…セミ的なかんじにしますか。
カメ:せ、み…?
乙姫:土の中で長く生きて陸では一週間で命が尽きる的な?
カメ:いえ陸に帰っても命は尽きません。爺になるだけです。乙姫さまも落ち着いてくだされ。
乙姫:だよね、パニクってた。じゃあどうすればいいんだ。いきなり知り合い一人もいない文字通り独居老人になった太郎を。
カメ:かくなる上はこのカメが陸に上がり太郎さまの寿命が尽きるまでお供いたします。話し相手くらいにはなれます。身の回りのお世話も誠心誠意させていただきます
乙姫:いやいやいや、一ヶ月程度の付き合いの奴と一生一緒にいるのキツいて。
カメ:ではどうすれば…
乙姫:逆に住まわせちゃう?竜宮城に。タコ爺も気に入ってるし、深海の歴史に興味があるってことは太郎も住みたいんじゃない?そうだよ、きっとそう!だから帰らないんだよ!どうせ陸には太郎の知り合いもういないし。人手不足で居て欲しいとか言えば、カメを助けるくらいのお人好しだから簡単に丸め込めるんじゃない?!
カメ:さすが乙姫さま!妙案ですぞ!
乙姫:どうも(照)
太郎:いやーとても有意義な時間でした。特に深海の歴史は興味深かった。潮の流れや変化など教えて頂けて今後の漁に役立ちそうです。長々と滞在してしまってすみませんでした。そろそろお暇しようと思います
乙姫&カメ:今!!!???
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祖父:的な?
孫:いやなんの話?長えよ。
完