【創作】友情 1/2

弘明: やっぱりここにいたか(土手)

瞬:  …おう

弘明: どうした。結人と喧嘩でもしたか?(瞬の隣に腰を下ろす)

瞬:  結人はなんて?

弘明: きいていない。てか、きけてない。いつも昼過ぎまで寝てるアイツが朝から出かけてお前がここにいるってことは、そういうことだろ?

瞬:  …(無言で川の流れを見てる)

弘明: やっぱりな

瞬:  よく分かったな

弘明: 解るさ、俺たちどれだけ長い付き合いだと思ってるんだよ。幼稚園から始まり、小中高大ついには会社も同じときたもんだ。腐れ縁なんて言葉じゃ足りないくらい強固な絆で結ばれちまってんだ俺たちは。どうせ結ばれるならツンデレ美少女がよかっ    たよ、なんつってな。神様も野郎三人なんて酷なことをすんだな。で、今日はどうした、またぷりんか?

瞬:  ああ、そうだ。またぷりんだ。

弘明: だはー!いい歳こいてお前ら本当にしょうもねえな。ぷりん盗られたくらいで喧嘩なんかして。そういえば、小学生の頃瞬が道で拾ったチョコを結人が欲しがって奪い合いの喧嘩になったよな。俺が仲裁してさ。そうだそうだ、奪い合いといえば、中学の時さ、クラスのマドンナの白鳥さんのことを三人とも好きになっちまって、三人同時に告白してキレーに三人振られたよな。それが噂になってか知らねえけど、俺らその後、影でだんご三兄弟なんて呼ばれてたらしいぜ。お前は無口、結人はお調子者、俺はツッコミでキャラ立ちしてたもんな。で、高校入っても三人仲良くつるんでさ。そういえば、高校の時、お前と結人は俺のいないときに限ってよく女子に絡まれていたよな。結人は適当にあしらってたみたいだけど、お前は図体でかいわりに小心者だからその度に俺がよく助けてたよな。大学入ってそれぞれのプライベートの時間が増えたが定期的にお前からぷりんの相談があって、俺が仲裁して三人で呑んで、なんやかんや同じ会社に入社をきっかけにシェアハウスだもんな。こんなんだから俺ら三人未だに彼女できねーんだよな!

瞬:  俺、彼女いるよ(ボソ)

弘明: えっ!!?ま!!?きいてなっ!!はっ!!ぶねー、騙されるところだった~、お前でもそういう冗談言うんだな。マジでビビったわ。社会に出てそういうコミュニケーションを学んだんだな。いや~、ツッコミに磨きがかかりますわ~。そうだ、来週の会議だけど…

瞬:  俺、彼女いるよ(ぼそ)

弘明: …まじなの?

瞬:  まじだけど?

弘明: 俺知らなんだけど。

瞬:  …?

弘明: どういうことだよ!!説明しろ!!

瞬:  告白されたから付き合った

弘明: 無口で無愛想なお前がか!?告白される!?付き合う!!?つーか、情報量少なすぎてなりゆきとか相手の子の様子とか全然わかんねー!けど、情報量少なすぎて心に響く衝撃がスゲー!!お前を好きになる子ってどんな子なんだ~!きになるううう

瞬:  滝沢さん

弘明: えっ!!同期の受付の滝沢さんか!!?創立史上一番の美人と噂される滝沢さんか!!?

瞬:  コクリ

弘明: ええええええ!!!お前なにしたんだよ!!滝沢さんの弱みでも握ったか!?

瞬:  荷物運ぶのを手伝った

弘明: そんなことで!?ちょろすぎだろおお!!!俺でもできるうううう!!!   羨ましいいいい!!!はっ!!つい心の声が漏れてしまった!親友の初彼女だ!おめでとう!その…付き合ってどれくらいなんだ?

瞬:  一週間

弘明: そ、そうか。もう、そのー、チューとかしたのか…?

瞬:  してない。もう彼女じゃない。それと初カノじゃない。

弘明: え?はっ!!え!!ちょっと待って、何を言っているか本当に分からん。滝沢さんは彼女だろ!?

瞬:  彼女だった

弘明: 別れたのか?

瞬:  うん

弘明: 振ったのか?

瞬:  振られた

弘明: そ、そうか…、一週間足らずで…、恋愛とはそういうものなのか?

瞬:  わかんない

弘明: そうだよな、お前も初めてだもんな…いやっ!!!初めてじゃねーじゃん!! お前さっきのくだりでさらっと初カノじゃないって言ったじゃん!!どういうことだよ!俺聞いてねーんだけど!!

瞬:  言った

弘明: 嘘つくんじゃねーよ!俺はお前の50メートル走の最速タイムっていうどうでもいいことまで覚えている親友だぞ!彼女ができたなんて最重要情報を聞いて忘れるわけねーだろ!親友をなめんな!

瞬:  言った

弘明: てめ!怒るぞ!いつだよ!?

瞬:  中二の秋に初カノに振られて落ち込んでるときに弘明に励ましてもらった。

弘明: え??中二の秋??!

瞬:  あの時もここでふさぎ込んでる俺を一番に見つけて励ましてくれた。でもなんて言っていいか分からなくて黙ってる俺に親友として受け止めてくれるって、それで…

弘明: ちょっと待った!確かに中二の秋にお前を慰めたことは覚えてる。でもあれは結人にぷりんを盗られたって話だろ。確か黙ってるお前に「話したくなければ例え話にしたら親友として俺が真意を受け止める」って言ったんだ。それでお前が絞り出すように結人にぷりんを盗られたって言ったんだよ。で、なんだぷりんか~ってなって、お前と結人を仲直りさせたんだよ。

瞬:  そう

弘明: そう、じゃねーよ!意味わかんねーよ

瞬:  だからぷりんに例えた

弘明: へ?

瞬:  初カノをぷりんに例えて結人に盗られたって言った

弘明: ええええええええ~~~!!!!!!!ぷりんって彼女のことだったの!!!??中二の秋に初カノ!!!?っっつか!!結人に盗られた!!!!??

瞬:  コクリ

弘明: え~と、かなり困惑してる、俺いま。状況を整理させてくれ。お前は、中二の秋に、初カノを、結人に、盗られたってことか!!?
瞬:  コクリ

弘明: のえええええ~~!そうとも知らずに俺はお前らの仲を取り持ったってことか!?

瞬:  解っていて仲直りさせてくれたのかと思った

弘明: 解ってねーよ!いや、例え話にして真意を受け止めるって言ったの俺か!お前よくあんな気軽な仲裁で仲直りできたな!?

瞬:  最初は落ち込んだけど、彼女ってよくわかんなかったし、

    弘明の言葉を聞いてそんな程度のものかなって思った。

弘明: 彼女はそんな程度のものじゃねえって!!まさか彼女をぷりんに例えるとは思わねえじゃん!ぷりんごとき食われて喧嘩したことが恥ずかしくて言いづらかったのかと思うじゃんか。普段お前、何も気にしてませんみたいな顔して生きてる奴でもそういう可愛い一面があるのかと思ったんだよおおおお!おいおい(泣)なんかもう、本当にごめんんんん!!(泣)はっ!じゃあ、ちょっと待て、中三の夏のぷりんも!?

瞬:  コクリ

弘明: 高一の文化祭後のぷりんも!?

瞬:  コクリ

弘明: 高二の夏合宿中のぷりんも!?

瞬:  コクリ

弘明: 高三の修学旅行前のぷりんも!?

瞬:  コクリ

弘明: 大学時代のすべてのぷりんも!!?

瞬:  コクリ

弘明: まじで~~~~!!お前めちゃくちゃモテてたじゃんんんん!(泣)じゃなくて、親友なのに気づけなくてごめんんんん(泣)今更だけど本当にごめんなあ。そうじゃなくても、お前は今滝沢さんに振られて落ち込んでるっていうのにいい(泣)えちょっと待て、お前は冒頭で結人にぷりん盗られたって落ち込んでたんだよな。で、ぷりんは彼女のことで、今回の彼女は受付の滝沢さんのことで、つーことは、例え話で本質がぼかされてしまったけど、お前は受付の滝沢さん含め過去すべての彼女を結人に盗られたってことか!?
瞬:  コクリ

弘明: なんじゃああああ、あいつうううううう!!!結人のやろおおおおおお!!!!

 

↓↓つづき

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