【創作】買い物 1/2

 

明子: はい、お邪魔しますよ

千佳: いらっしゃい。いつもありがとうね

明子: いいのよ、好きでしていることだから。はいこれ、今回の作り置き惣菜ね。

千佳: わあ、こんなにたくさん。私の好きなお母さんのお煮しめがある!から揚げも!お浸しも!作るの大変だったでしょ

明子: わっきゃないわよ。週末になる度に正一は帰ってくるし、それに奈知の家の分も作らなきゃだから、どうせ作るなら手間は一緒だもん。

千佳: 就職した息子と、嫁いだ娘たちの家の食事の世話まで本当に頭が下がります。

明子: 正一はこちらの安否確認も兼ねてだからね。奈知の家は小さい子供もいて、共働きでしょ。それで毎日の食事の用意なんて手が回らないわよ。こうして作って宅配便で送ってやれば少しは手助けになるでしょ

千佳: 少しどころじゃないよ。大助かりだよ。家計を考えながら買い物して、メニュー考えて、作ってって本当に大変だもん。お母さん、三世帯分を一人で作ってるんだね。ありがとうね。そうだ、はい、今回の分。

明子: あら、こんなに、悪いわね。

千佳: 作ってもらってるんだもん。食材代くらい払わせてよ。

明子: そお?じゃあ、有難く頂戴するわね。これでまた何か作ろうかしらね。そうだ!会員制大型スーパーで甘いものでも買おうかしら♪

千佳: あ~、お母さん、作ってもらっておいて、こんなこと言うのは気が引けるけど、甘いものは控えたほうが良くない?また太っちゃうよ。今後の健康のためにも痩せたほうがいいんじゃない?

明子: そうよね~。大して食べてないのに太ってるのよ~。野菜だって摂ってるし、便通もいいし~

千佳: そうなん?でもそんなに太っているのは食べているからだと思うよ。いくら更年期の運動不足でもそこまで太らないよ。ちなみに何を食べているの?

明子: 朝だってパンとミルクティーだけなのよ。

千佳: 本当に?

明子: そうよ。パンに半熟の目玉焼きと、カリカリベーコンと、レタスを挟んで、ディップソースを塗って食べてるの。あと、お昼の番組で紹介していたカッテージチーズが美味しそうだったからお取り寄せして、それも添えてるかな。あと健康のためにはちみつをティースプーンに10杯舐めてる。本当にそれくらい。

千佳: はちみつを10杯!?それでミルクティーも飲んでるんでしょ!?つか、パンのボリューム!その上、カッテージチーズ!食べ過ぎだって!

明子: そうかしら?野菜だって食べてるのに?

千佳: パンに挟んだレタス程度じゃ、摂ってるとは言わないよ!想像以上にやばい食生活してる。それならさ、運動したら?独身の頃、社会人サークルでダンスしてたんだよね?また始めたら?

明子: 今更無理よ。衣装も入らないし。

千佳: いや、衣装はいいでしょ。まずは踊れば。

明子: 形から入るタイプだから衣装は大事よ

千佳: じゃあ、お父さんと二人で歩いたら?そういう夫婦よく見るよ

明子: いやよ。お父さん小言が多くて。フォームがどうとか、腕を振れとか、ペースがどうとか言うにきまってる

千佳: あ~言いそう。じゃあさ、近所にヨガスタジオできたじゃん。ヨガはそんなにつらくないよ。

明子: 今更新しいこと始めるのは抵抗があるわ。

お母さんも瘦せなきゃなって思ってるの。お母さんの希望としては、運動はしたくないの。この年で運動してケガでもしたら一生もんでしょ。あと食事も変えたくないの。今は食事くらいしか日々の愉しみがないの。要は今の生活を変えずに痩せたいの。そんな方法をずっと模索しているの

千佳: ねーよ。

 

ーーーー

明子: そうそう、この前ね、スーパーでお肉を大量に買ってたら、隣のおばさんに「ええ!こんなに食べるの!?」って叫ばれて。もう急に言われたもんだからこっちもびっくりしっちゃって。「はい、ここのお肉美味しいですよね」って言っちゃった。後から考えたら私一人で全部食べると思われちゃったよね。やだ~もう。

千佳: まあ、その体型でお肉を大量購入してたから、つい口をついて出ちゃったんだろうね、そのおばさんも。それでお母さんも叫ばれて動揺しちゃって肯定しちゃったんだ。

明子: そうなのよ~。全然食べてないのに~

千佳: まあ、そのお肉に関しては三世帯分だから食べてないけど、「全然食べてない」ことはないよ、さっきの朝食からして。

明子: え~

千佳: っていうかさ、他人がどれだけ買おうが、食べようが関係ないでしょ。そもそもさ、なんでおばさんってゼロ距離で話掛けるんだろうね。すみません、とか、ちょっとよろしいでしょうかとかないよね。身内位の距離間でさ。

明子: あら、やっぱりいきなり話しかけるのはまずいのね。

千佳: ええ、お母さんもやってるの?

明子: そんなしょっちゅうじゃないの。この前ね、直売店で大量にとうもろこしを買う人がいて、こんなに買うんですかって聞いたの。そしたら、この品種が美味しくて県外からわざわざ買いに来てるのよって教えてくれたのよ。試しに買ってみたら甘くておいしかったの。だから入荷する度にうちも大量に買うようになったのよ。奈知の家にも送ったら孫ちゃんたちが大喜びだって言うから、買うたびに孫ちゃんたちの笑顔を思うと、私もつい顔がほころんじゃってね。

千佳: ほころんじゃってね。じゃないのよ。「こんなに買うんですか」って「こんなに食べるの」って聞いてるのと同じじゃん。

明子: 違うわよ。私は疑問形で、この前の人は絶叫系。

千佳: いや、趣旨は同じだって言ってんの。

明子: そうそう!その直売店でね、いつものようにお会計したら、レジした人が正一の高校生の時のお友達のお母さんだったのよ!最初に声を掛けられたときは全然分からなくて、サッカー部のって言われてやっとピンときてね、本当にびっくりしちゃった。いつもはバックヤードで働いてるけど、その日はたまたまレジ打ちだったんだって。ずっと買い物に行ってたのに初めてよ。それにしても最後に会ったのは10年前よ。息子同士は仲良しだったけど、お母さんとは特別仲が良かったわけではないのに、わかるものなのね~。

千佳: ん~、なんかお母さんって目立つんだよね。

明子: え、私が?眼鏡かけた太ったおばさんなんてそこらへんにいるじゃない。

千佳: ん~、目立つっていうか気配がでかい。学生のとき授業業参観でさ、前見ててもお母さんが来たのすぐにわかったもん。

明子: え~、なにそれ~。

千佳: 自分で思っている以上にお母さんは目立つから悪いことできないよ~。いつどこでだれが見ているか分からないからね。

明子: 悪いことと言われて、ちょっと心配なことがあるわ。隣町のスーパーでジャガイモを一箱買ったのよ。家に帰って開けたら結構の数傷んでて、少しくらいなら分かるけど、あまりにも多くて、もう一度ジャガイモの箱を持ってお店に行ったのよ。品物を交換してほしくて。でね、対応してくれた女の人がちょっと要領を得ない方で、ダメともいいとも言わず、オロオロしていて、困っていたら、ちょうど店長さんが来て、「お得意先さんだから」ってすぐに交換対応してくれて、お詫びにその日のセール品だった枝豆を一箱貰ったのよ

千佳: 何が悪いことなの?

明子: なんかクレームつけてセールの枝豆をせしめたみたいじゃない?

千佳: 店長がくれたんだからいいんじゃない?店長に顔を覚えられるほど、そのスーパーでも大量買いしてるんだから、それは好意として受け取っていいと思うよ。

明子: そうかしら。そして、それがこの枝豆です!

千佳: これか!助かる~

明子: うふふ

 

↓↓つづき

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